▲角交換四間飛車(7八金型)対△居飛車 自戦記(30)
今回は久々に▲7八金型角交換四間飛車を相手にしました。この形は非常に有力な駒組みで一時期は後手番だけですが相手が居飛車の時に採用していたこともある形です。
玉形は美濃囲いなどでコンパクトに固く出来て尚且つ振り飛車側からの攻め筋も豊富なため相手にやられると厄介な戦法です。
初手から
▲7六歩△8四歩▲6八飛△3四歩▲4八玉△6二銀▲3八玉△4二玉▲2二角成(図1)
先手は角道オープンの四間飛車でした。こちらは後手番で2手目△8四歩と居飛車を宣言している格好なので普通に駒組みを進めますが△4二玉の瞬間に▲2二角成と角を交換するのが角交換四間飛車のよくある進行です。これは後手に△3二玉とされてからでは▲2二角成に対して△同玉の変化の余地を与えるので△同銀と取るしかないタイミングで角交換をして形を限定している意味です。個人的には△同玉とする将棋も決して居飛車が勝ちやすい将棋になるわけではないと思っていますが、振り飛車側からしてもいろいろな形を想定して準備しなければいけないのであえて選ぶ変化ではないということなのではないかという認識です。一応後手に穴熊を選び辛くさせている意味もあるかと思います。
図1から
△同銀 ▲7八金△8五歩▲2八玉△3二玉▲3八銀△5二金右(図2)
△同銀に▲7八金とされたので7八金型角交換四間を先手が目指していることが確定しました。よくある形としては▲8八銀や▲8八飛として後手からの飛車先交換を受けておくような進行もあるのですが、▲7八金型の場合はこの7八金で8筋突破を受けて7七桂を急いでツノ銀のような形を作ってバランスよく指そうという狙いです。後手の陣形によっては6筋からバンバン駒をぶつけて捌くような展開や8筋の歩交換をされても8九飛車から8筋の逆襲を狙う手など豊富な攻め筋がある厄介な戦法です。
▲8八銀型や▲8八飛型の場合は逆棒銀の筋もあるので△8五歩は保留して指すことが多いのですが、この▲7八金型の場合はこのタイミングで△8五歩と突いて8筋で歩交換をして1歩手持ちにして指すのがいいのではないかと思っています。
先手としては8筋で歩交換されても将来▲8一飛と8筋に転換して逆襲する筋も狙っているところですので歩交換は受けずに▲2八玉と囲いに手をかけてきました。後手としても8筋の歩交換はいいタイミングで入れればいいので歩調を合わせて△3二玉と固めて2二の銀に玉で紐を付けて、いつでも△8六歩といけるようにしました。先手は▲3八銀と美濃囲いを一先ず完成させたのでいつでも強い戦いが出来ます。△5二金右とここでも歩調を合わせてこちらも金をくっつけ固めあったのが図2です。
先手は8筋の転換以外にも6筋から駒をぶつけて捌いてくる進行も考えられ△5八金右と一手入れておくのは6筋を補強している意味でも結構大事な一手になります。
本当なら後手は△6四歩〜△6三銀型を目指したいのですが、△6四歩と突いてしまうと▲6六歩とされて6五に争点が生じてしまい▲7七桂、▲6七銀〜▲5六銀と使われて▲6五歩からの6筋攻めも警戒しないといけなくなります。また△5四歩みたいな手も後手は指したいのですが5筋を突いてしまうと今度は将来の▲7一角と打ち込む筋を警戒しないといけなくなるのでこの歩突きをどちらも保留しているのは後手のささやかな工夫です。
図2から
▲1六歩△1四歩▲6九飛△7四歩▲6八銀
△8六歩▲同歩 △同飛 ▲8七歩打△8四飛(図3)
▲1六歩は美濃囲いの避難口を開ける意味で価値の高い一手です。対して現状壁銀で右辺に逃げ込む形にならない後手は△1四歩と1筋の突き合いをするのはそんなに得になっていないのですが▲1五歩と1筋の位を取られてしまうと先手玉が非常に広くなってしまうので仕方なく突き合いました。
先手としては端歩も突いて玉の整備は十分となりましたのでそろそろ攻めの形を作ろうと▲6九飛と働きの悪い飛車に手をかけてきました。この飛車引きで8筋転換をする筋もそろそろきそうなので後手ものんびり構えていてはいけません。△7四歩と△7三桂と活用する手が指せるようにしました。▲6八銀と先手は着々と攻めの形を作る手を指してくるのですが、この7八金型角交換四間飛車という戦法は左辺の陣形を組み上げるのに手数がかかるという弱点があります。先手の理想的な駒組みは6六歩6七銀7七桂7八金6九飛(8九飛)といった形なのですが、そこまで組まれてしまうとなかなか居飛車から仕掛けて手を作るのは大変なのですが組み上げるまでに若干の隙が生じます。
後手としては先手の左辺の陣形が不安定なうちにポイントを上げられれば指しやすくなります。また後手は△8六歩から1歩入手しながら飛車先を軽くできる権利があってその歩をうまく攻めに使えれば局面をリードできます。
ここで△8六歩が満を侍しての一手でついにその権利を行使します。
なぜこのタイミングで飛車先の歩交換をするかということなのですが、▲6九飛と▲6八銀が入ると先手は将来的に7七桂と指さないといけなくなるという理屈があります。先手が7七桂と跳ねる形になれば桂頭という弱点ができるのでその時に1歩後手が持っていれば△7五歩▲同歩△7六歩という筋が生じるという理屈です。先手は7七桂と跳ねない形では8筋に転換することも出来ないですし6八銀としているので6筋から攻めることも出来ないこのタイミングがベストだという判断です。
△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩と飛車を追い返すのは自然な進行です。
ここで△8四飛と中段飛車に構えるのがこちらの研究手です。
若干不安定な飛車に見えるのですがこれは△7三桂と跳ねた際に桂頭を飛車で守っている意味と場合によっては3筋や2筋に転換して玉頭攻めをする狙いです。
図3から
▲9六歩△3五歩▲7七桂△7三桂▲8九飛△7五歩(図4)
▲9六歩はなかなかの一手です。先手の相手が知っていたのかはわかりませんが▲6六歩〜▲6七銀型を目指してきた時に後手から△9四角打という一見筋悪な攻めがあるのですが(自戦記15で指している筋です対角交換四間飛車 自戦記(15) - 厚み重視ブログ)これを防いでいる手です。この筋を事前に防がれてしまったので今回は玉のコビンを直接狙いに△3五歩と狙いにいきました。これは△3四歩の突き捨てから5五角狙いなので▲7七桂と△5五角と打った時に香車取りにならないように受けたのですが▲7七桂と跳ねると今度は桂頭が弱点となります。
一度7三桂と活用して▲8九飛に待望の△7五歩です。これに対して▲同歩は△7六歩の桂取りがあるので同歩とはできません。
図4から
▲8六歩△7六歩▲8五桂△6五桂(図5)
▲8六歩としてきましたが、△7六歩の取り込みが気持ちいいです。▲8五桂と先程の8六歩を活かして桂を逃げますが△6五桂の跳ね違いが絶品です。先手は8筋の逆襲を狙っていたのですが8五桂と8六歩が飛車先を塞いでいて非常に重たい格好ですし、後手は次に7七歩成という厳しい攻めが残っています。後手の飛車は四段目で横利きが通って威張っていて飛車の働きも違います。また先手は歩切れなのが泣きどころで細かい攻めも効かないという状況です。
△7五歩が実現して後手が優勢となりました。
図5から
▲6六角打△7四飛▲8七飛△6九角打(図6)
▲6六角打と飛車取りに当てながら7七の地点に利かしますが△7四飛があって後手十分です。ここで先手が歩切れでなければ7六歩と打てるのですがその歩がありません。▲8七飛と苦心の受けで耐えてきましたが流石にこれは辛い手です。
対局中はこの局面は後手がうまくさせているはずと思っていたのですがここでいい手があるはずと1分以上考慮して△6九角と打ちました。
この手も悪くはないのですが△8四歩と打って桂馬を取るような手の方が良かったみたいです。
図6から
▲7九銀△7七歩成▲同角 △同桂成▲同飛 △同飛成▲同金 △3六歩▲3五飛打△3三飛打(図7)
▲7九銀と金に紐をつけて受けてきましたが7七の地点の利きが減ったので△7七歩成から▲77同角△同桂▲同飛△同飛成▲同金と精算して桂馬と角の交換という大きな駒得を果たしました。ただ、6九の角が取り残されてしまっていて次に▲5九金とされると角が死んでしまいます。6九の角を助けたいので△3四歩と突いて▲同歩なら△5五角打が王手金取りになるので△3四歩としたのですが▲3五飛と歩の裏側から飛車を打たれてしまいました。
正直これは全然読みにない手だったので一瞬ヒヤッとしたのですが、△3三飛打と飛車には飛車という受けがあって問題なかったです(ここでは3七銀くらいでも大丈夫だったみたいです)
図7から
▲同飛成△同銀 ▲4六桂打△3七歩成▲同玉 △7六歩打▲7八金(図8)
▲3三同飛成△同銀となって壁銀解消できたので後手としてはこのやり取りでは得できました。先手はとにかく斜めのラインで攻められるのだけは嫌だと▲4六桂と守ってきましたので、一度△3七歩成を利かしました。これは何で取っても嫌だと思ったのですが▲同玉と応じられて手が見えなくなってしまいました。先手玉は結構しっかりしていますし後手は角を殺される手が残ってしまっているのでどうしたものかと思ったのですが、△7六歩として▲7八金と引かせて金と差し違える順を選びました。
ただ、ここで角と左辺で遊び気味の金を交換するしかないのであればやっぱり△6九角打と攻め込んだ手はイマイチな手だったみたいです。
図8から
△同角成▲同銀 △7九飛打▲8七銀△7七歩成▲8一飛打△3六歩打(図9)
△7八同角成▲同銀と角と金を差し違えましたが、駒割は桂と金の交換で依然後手の駒得です。△7九飛と打った手が銀取りで入るのも大きいです。▲8七銀と逃げますが、△7七歩成としてと金が出来れば後手大優勢のままです。
先手も受けてばかりではジリ貧なので▲8一飛打と攻め合いを目指してきますがこの手はなんでもないです。
△3六歩と玉の頭に歩を叩いたのですが、ここでは△3九金打という寄せの手があったみたいで対局中は全く見えていませんでした。▲同金なら△同飛成で龍が好位置にできてよかったみたいです。
対局中はとりあえず△3六歩の利かしはどう応じても具合が悪いでしょうとたいして考えずに叩いたのですが△3九金という手が優ったみたいです。
図9から
▲同玉 △8七と▲3四歩打△4四銀▲3七玉△7一歩打▲9一飛成(図10)
△3六歩の叩きに▲同玉と応じられましたがこれは玉が囲いから釣り出される格好なので流石に悪くはないと思ったのですが実際指されてみるとどう寄せたらいいのかさっぱりわからなくなってしまいました。
とりあえず△8七とで銀を拾って持ち駒を蓄えておきましたが、▲3四歩の叩きが入って△4四銀と躱しますが▲3七玉と引かれてやっぱり寄せが見えませんでした。
ここでもやはり△3九金打という筋があったのですがここに金を打って迫っていく筋はずっと見えませんでした。
寄せがさっぱり見えないので△7一歩と龍を遮断して万が一を無くしましたがこれは悪手判定を受けてしまいました。
ただ、局面自体は対策になっていますし先手は駒損が大きすぎて戦力不足なので▲9一龍と香車を拾ってきました。
図10から
△8六と▲9三龍△8五と▲9四龍△9九飛成▲8五龍(図11)
寄せの形が全く描けなかったのですが、桂馬が手持ちにあれば△4五桂の王手から攻めていってうるさいだろうと△8六とで歩を補充して歩切れを解消しながらそっぽの8五の桂を取りにいきました。筋は非常に悪いと思いますがスパッと決める手(△3九金打)が見えていないので仕方ないところです。△8五とまで入って桂馬が入手出来たのですが先手も攻め手に欠いていて▲9四龍と撤退してくれたので局面を冷静に見れば後手玉は全く寄るような形ではないのでゆっくり△9九龍と香車も補充しておきました。先手は指す手がないので▲8五龍と中段に龍を活用しながらと金を払いますが流石にこのと金を取るくらいの手しかないなら厳しいです。
図11から
△4五桂打▲2八玉△3五香打▲3三歩成△同桂 ▲3七歩打△2五桂▲5九香打△1五歩▲2六歩(図12)
△4五桂と打ててようやく寄せの形となりました。▲2八玉と落ちますが△3五香打として先手は歩で受けて守りたいと▲3三歩成と成捨てて△同桂▲3七歩と頑張りますが△2五桂と攻め駒を足していけば物量で押し潰せます。
▲5九香打と根性の頑張りで受けますが先手玉はもう寄形です。一回△1五歩と端にも味付けしましたがこれは微妙だったようです。
▲2六歩と桂取りで催促してきたのが図12です。
図12から
△3七桂左成▲同桂 △同桂成▲同銀 △同香成▲同玉 △4五桂打▲4八玉△3七角打(図13)
3七で全部精算して△4五桂と迫りましたが△4五桂に代えて△3六歩から即詰みがありました。△4五桂に同龍なら即詰みはなかったみたいです。
本譜は△4五桂に▲4八玉と逃げてくれたので即詰みがあったのですが△3七角と打って王手を継続しますが...
図13から
▲5八玉△5九角成▲同金 △同龍 ▲同玉 △5七桂成▲5八飛打△5六銀打▲2五桂打△5八成桂▲同玉 △5七金打(終局図)
▲5八玉に△5九角成としましたがここでは3手詰めを見逃していて△6九銀打として▲6八玉に△7八金打まででした。
対局中は△6九銀という王手が全然見えなくて△5九角成から▲同金△同龍▲同玉と玉を下段に落として5七桂成と詰めろで迫って▲5八飛打にも△5六銀と繋いで寄せました。
終盤で時間に追われているとはいえ、結構簡単な詰みを見逃してしまうというのは情けないですが概ね満足な一局となりました。
▲7六歩△8四歩▲6八飛△3四歩▲4八玉△6二銀▲3八玉△4二玉▲2二角成(図1)
△同銀 ▲7八金△8五歩▲2八玉△3二玉▲3八銀△5二金右(図2)
▲1六歩△1四歩▲6九飛△7四歩▲6八銀
△8六歩▲同歩 △同飛 ▲8七歩打△8四飛(図3)
▲9六歩△3五歩▲7七桂△7三桂▲8九飛△7五歩(図4)
▲8六歩△7六歩▲8五桂△6五桂(図5)
▲6六角打△7四飛▲8七飛△6九角打(図6)
▲7九銀△7七歩成▲同角 △同桂成▲同飛 △同飛成▲同金 △3六歩▲3五飛打△3三飛打(図7)
▲同飛成△同銀 ▲4六桂打△3七歩成▲同玉 △7六歩打▲7八金(図8)
△同角成▲同銀 △7九飛打▲8七銀△7七歩成▲8一飛打△3六歩打(図9)
▲同玉 △8七と▲3四歩打△4四銀▲3七玉△7一歩打▲9一飛成(図10)
△8六と▲9三龍△8五と▲9四龍△9九飛成▲8五龍(図11)
△4五桂打▲2八玉△3五香打▲3三歩成△同桂 ▲3七歩打△2五桂▲5九香打△1五歩▲2六歩(図12)
△3七桂左成▲同桂 △同桂成▲同銀 △同香成▲同玉 △4五桂打▲4八玉△3七角打(図13)
▲5八玉△5九角成▲同金 △同龍 ▲同玉 △5七桂成▲5八飛打△5六銀打▲2五桂打△5八成桂▲同玉 △5七金打(終局図)